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木材塗装ライブラリー

木材ほど化粧ばえする材料はない

透明着色仕上は木材が独壇場

木材透明着色仕上げ(3)木肌と塗装の関係塗装で表面を仕上げる場合、その素地の表情を見せる「透明仕上」をするのは、木材だけです。

自動車などの塗装には、まるで七宝焼のように奥行と深みのある塗装法を採用したものもありますが、鉄板そのものを見せる透明塗装は絶対にありません。わざわざ手間ひまかけて透明塗装したって、鉄板の表情を見せたいなんていう人はまずいないでしょうし、貴金属の表情は美しいけれども、これらは塗装はしません。

木材は、その天然の木肌の表情が美しいのです。これを不透明塗料で塗りつぶしては、いかにも残念だと思う方が大勢いて当然で、よって前述のとおり木材塗装の分野で透明着色仕上が極限まで発達したのです。大勢の塗装のプロに尋ねてみても、木材以外の素地を透明着色仕上げにする例は思い出せない、と言います。この塗装システムは、それくらい「木材専用」なものなのです。

高級材と普及剤で使い分ける

透明着色仕上が木材に独特の塗装システムであることは、もうご理解いただいたことと思います。では、木材は何でも同じ方式で透明着色仕上するのかというと、そんなことはありません。すでに述べました通り、何も塗らないことも当然あるのです。

1. 高級材は極力そのままの姿がいい
たとえば唐木と総称される高級材があります。紫檀、黒檀、鉄刀木などが代表例で、木材自体に見事な表情と色調がある場合は、これに人工的な色をつけるよりも、そのもの自体の色を楽しんだ方がよいので、こんな時は、全く塗料を塗らないか、塗るとしても着色はしないで表面保護用の透明塗料だけにした方がいい場合が多いのです。
一方、高級材でも着色する方が多い材もあります。たとえば、バーズアイメープルなどが代表例ですが、こういうときはなるべく木材の質感を殺さないような「淡い着色」にします。いずれにしろ、高級材の場合は、木材自体の木目や杢そしてその色調を強調するように仕上げるのが普通なのです。

2. 普及材は着色が命である
普及材つまりごく一般に家具や建築に多用される木材でも、そこは天然の樹木だから鉄やプラスチックに比べれば、はるかにその表情は豊です。不透明塗料で塗りつぶしてしまうよりは、その木肌を生かしたいと誰でもが思うはずです。だからこそ木を採用したわけで、当然の考えです。こんな時に大活躍するのが、この木材透明着色仕上というシステムなのです。

システムキッチンのキャビネット用扉を例に説明します。
これは量産品です。だからその色調は揃っていなくてはなりませんが、木材自体で色調を統一することは至難の業です。同じ材質でも色調は全て違うからで、これを揃えるのがまさにこのシステムという訳で、木材の工業化には欠かせない存在になりました。

この「色調を揃える」ためのコツは、素地をあまり強調しないことです。つまり、濃い目に着色することでで濃淡さまざまな木材が、ピタリと同一の色調に揃えられます。
前述した「2段階着色」は、このために開発されたシステムです。こうすることで貴重な木材がムダなく使えるわけで、量産品のコストダウンの有力な手法になっているのです。

木材と塗装の複合で価値が生じる

木材透明着色仕上は、素地と塗装法のコンビネーションで価値が生まれたり、逆に死んだりします。ですから設計の方々のご使命は、この複合の妙をどう引き出すか、ということなのです。この部分をもっと積極的に担当してほしい、というのが塗装の技術者の希望であります。

いくつか例をあげて説明します。たとえば、この方法で仕上げると「てり」が変わる木がありますが、ある角度で見ると斑が見えるのに、別の角度から見るとこの斑が消えて見えない、ということが起こります。どちらかというと、南洋材に多い性質ですが、この「斑の濃淡の逆転」は、塗らないと発生しません。木材のままでは、どこからどう見ても、この現象は起こらないのです。
つまり、塗装することによって、木材は全く新しい表情さえ創り出せるのである。

もう一つの例はご存じの「ワイピング」です。木材を一度着色して、それをふき取る、あの方式です。こうすると、導管の深いところには塗料がよくしみ込んでいるから、色が残る。これが浅い所はしみこみが悪いので、拭くととれてしまう。こうすると濃淡が木目に沿ってクッキリ浮き出てくる。木目が素地の時よりずっと強調できるのです。
こうしておいて、再び塗る。仕上がったものを見ると、これも素地の時とは全く違う表情になっているというわけです。

この2例だけでもお分かりの通り、木材の透明着色仕上は素地としての木材と着色する色調とその塗り方によって、実に無限の表情を作り出すことが可能です。
ですから設計者(発注者)の方々にはこの可能性を追求して頂きたく、それにはもう少し塗料と塗装のプロと相談され、共に研究させていただきたいのです。

特に家具塗装の世界では、メーカーの技術はすでに世界的に見てもハイレベルです。
「家具デザイナーはこれを活用しきっていない、現在のレベルを活用すればもっと面白い家具が出来るはすなのだが・・・」とは、さる塗料メーカーの研究者の言葉です。

木材ほど化粧ばえする材料はない

どんな木材でも、それが木である限りは、透明着色仕上で塗るとガラリと表情を変わります。これほど化粧ばえのする材料と塗装法は、他にないでしょう。前述した「斑の濃淡が逆転する」例を見事に利用すれば、平面的な木材に立体感が生じ、全く新しい表情と価値を生みます。昔、といってもそれほど古いことではありませんが、マホガニーを使ったステレオセットなどではこの手法で少しでも商品価値を高めようと、各社とも随分研究したそうです。

けれども、とある専門家は言います。マホガニーなどの高級材より、ごく普通の木材にこそ、この「化粧ばえ」の可能性を利用してほしいと言います。
誤解を恐れずに言えば、どんなに安物の木材でも、それが天然の木である限り、最も高級な人工材料にまさるのです。たとえば超高級材の木目を写真にとって、これを原色印刷したプリント合板よりも、ごく安物の本物をきちんと塗装した方が、説得力ある「表情」になるのです。それは「安物を高級に見せる」ごまかしとは違います。「塗装」と簡単に呼ばれる表面仕上法は、こと木材を素地とする時は、単なる仕上げ工程ではないのだということを、多くの設計者の方々に再認識してほしいのです。
まず木材そのものが選択できます。次に、その木材を目的に応じて最も引き立たせる色調と、それを総合して美しく仕上げる塗装の方法が選べるのです。
繰り返して恐縮ですが、木材透明着色仕上という塗装法は、木材と塗料の、「総合的複合」なのです。

こんなに面白く、かつ可能性を秘めた仕上げ加工が他にあるでしょうか。それなのに、これが十分に使いこなされていない。木が、殺されている、何ともったいないことだろう・・・と別の塗料メーカーのプロも言います。そうでなくても良質な木材は減る一方です。どんなにお金を積んでも、現物がなければ買えない。
それでも、インテリアデザインに「木」は欠かせない。こんな八方ふさがりの状態が、今後ともずっと続くことが予測されます。これを解決する方策の一つとして、塗装があります。もちろん、これで解決できる範囲は知れていますが、省資源や自然保護という視点から塗装というシステムを見直して頂きたいのです。家具メーカーはすでにこれに取り組んでいます。
ですが、設計者やデザイナーの方々の意識は、まだここまで来ていない、とその人はタメ息をつきました。

工作社「室内」設計者のための塗装 岡田紘史著より