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木材塗装ライブラリー

塗装用語の混乱について

設計者は塗装用語に無関心すぎる

塗装用語の混乱について一つの例を挙げます。昔(と言ってもそう古いことではないですが・・)オイルステインと総称されていたものは、現在は「木材透明着色仕上」と呼びます。この方が正確で、指示する方もされる方も誤解なく仕事が進むので、業界ではこう統一しています。
ですが、相当数の設計者の方は「オイルステイン」という古いタイプの塗料の「品種名」を「仕上」の表現名として使っています。ある塗装のプロはこう言います。「建築家やデザイナーの方々は、塗装の『用語』に対する関心が、残念ながらとても稀薄です。仕方ないので、塗る側がしかるべき解釈し、先生方の意向を忖度(そんたく)して『結果としてご指示通りになるように』塗上げているのが実情です」と。

これでは、せっかくのアイデアや素晴らしいデザインが、塗装の過程で間違った方向に加工されることも起こりかねないのです。それどころか、現実には指示や指定があいまいだったり、不完全なために、塗膜が剥がれたり、結果が思わしくない、という事故が多発しているのが現実です。

冒頭に記述しました様に、現在わが国の塗料と塗装の「総合技術」は、世界一のレベルです。
それなのに、この技術レベルを活用しきっていない部分があるとするなら、大変残念なことです。そこで、「設計者と塗装のプロの間」のコミュニケーションをよくするにはどうしたらいいか、について述べてみます。


木材の塗装の用語に「混乱」が多発する

設計者やデザイナーの方々と塗装者の間で、意志の疎通がうまく行かないのは、なぜでしょう?
この問題を調べて行くと、実は重大な事実に行き当たります。以下に箇条書きに整理しますが、いずれも重大な構造的な欠陥を内蔵していて、一朝一夕には解決しそうにありません。よって、設計者の方が塗装用語を使う時に、意識的に注意して、塗装現場のプロに誤解なく指示を伝える努力をして頂きたいのです。

1. 専門教育の中に「塗装」がない
建築系、デザイン系の大学や高等専門学校や工業高校の「カリキュラム」に、塗装の科目がほとんどないのです。
塗装に関する事項は、材料学や色彩学などの強化の中でごく簡単に教えられるだけで、あとは実社会に出て実務の中で見よう見まねで覚えているのが実情です。従って、正しい用語が先輩から後輩に伝わらないことの方が多いのです。

2. 塗料と塗装の進歩が早すぎる
戦後、特に合成樹脂塗料が実用になってからの「塗料と塗装の技術とその知識」は、それ以前のものでは全く追いつかないくらい、進歩も早く、かつ複雑になっています。実際に塗る者でさえ、これに追いつくのは相当に大変です。
従って、建築家やデザイナーの方がこれに追いついていくには、常に「新しい知識」を吸収するご努力が必要ですが、そこの所がなかなかうまくいかないのであります。

それなら「プロの側」が積極的にアピールすればいいのですが、実はこの「プロの側」の広報活動が、設計者の方まで及ばないという現実があります。
つまり、「新しい情報」の大半は「塗料メーカー」から発信されますが、この情報は大半が「塗る人」向きなので、家具や自動車(以下略)のメーカーの塗装部門の専門家には届きますが、設計者やデザイナーの方までは届かないことの方が多いのです。
それでも頑張ってその「塗料メーカーの最新情報」を知ろうとすると、これが実にむずかしいのです。
カタログや使用説明書を読んでも、内容は専門用語だらけで、とても理解しづらいものです。最近は随分と改善されてきて、設計者やデザイナーの方向けのカタログも「同時に」用意している塗料メーカーは増えましたが、全体を見渡すとまだ「少数派」というのが現実です。

3. 古い知識と用語が混乱を生む
たとえばプラスチックに多用される塗料と塗装法などの新しいものなら、初めから何もかも覚えなければならないので、設計者の方と塗装者の間に「用語による混乱」は起こりにくいのです。
べつに、自動車のメタリック塗装のように、「仕上の表情」がはっきりと「塗装法」を明記するものなら、これも大きな誤解や混乱が生じる心配も少ないのです。

しかしながら木材の塗装は、歴史が古い。古いばかりでなく、塗装の方法とそれによって生じる塗膜の表情の種類も実に多い。日本古来の漆塗りだけで大変な数なのに、明治以来の西洋式の塗料と塗装法が加わって、さらに増えた。増えただけならそれほど問題はないのですが、この木材塗装の業界は歴史が古いために、西洋式の「当時の新方式」にも「日本式の用語」をあてはめて使っているものもあるのです。

木材塗装の世界はこのような特別な発展をして来たので、いわゆる合成樹脂塗料による「現代の塗装」が普及する前に、塗料と塗装法とこれによって生まれる「塗膜の表情」の用語が広く普及し、しかも塗装に関連のある「周辺の業界」---たとえば建築や家具やインテリアの業界など---に強く定着してしまっているのです。
つまり、木材塗装の世界には、いま「新旧の用語」が最も多く混在していて、混用され、従って実際の作業が必要な場合に最も多く混乱が生じているという状況です。その典型的な例が、冒頭に申し上げました「オイルステイン」なのです。

工作社「室内」設計者のための塗装 岡田紘史著より